- Home
- privatework
- ボランティアとビジネスの違い
ボランティアとビジネスの違い
- 2019/10/21
- privatework
- コメントを書く
過日、プラチナマイスター・アカデミーの卒業生を訪ねて武蔵新城のメサ・グランデを訪問した。メサ・グランデは八百屋とコミュニティカフェが共存しているちょっと不思議な空間である。
まず店構えの本格さに驚き、そこで出されている食事の美味しさやら佇まいの瀟洒さに驚く。あるいは、こんな言い方は不遜かもしれないが、NPOっぽさが微塵もない。
ただ、話を聞いているうちに「なるほどな」と思うこと然り。最初から目指しているものが違うのだ。
単なる一般論だが、NPOの立ち上げに際しては、活動目的の一丁目一番地に「社会貢献」を掲げる事が多い。これは当たり前といえば当たり前で、そもそもNPOというのは、そういうものである。
ただ、ここに「でも収支トントンは前提」という概念が欠如していることも多い。とても多い。
集まるのはボランティアスピリッツに溢れた人々。それはとても尊いことだけれども、「ボランティアだから滅私奉公が当たり前、お金を稼ぐなんて言語道断」という根強い感覚があるのもまた事実で、これが継続的な運営を妨げる要因になる。
と、ぼんやり語っても仕方がないので、少し実例を。
ボランティアあるある双六
- やりたいことファーストではじまるので、楽しそうだけれども採算は二の次。
- 人々は「使命感」と「(巧妙に隠された)自己実現」で集まる。合意は形成されているようで、されていない。
- はじまると発生する困難に対して出てくるお決まりの文句が「できる事をやろう」。それは概して「やるべき事」とは乖離している。なぜなら、それは「できる事」という言葉に包まれた「やりたい事」だから。
- そうして、やるべきだが困難な事はいつまでも先送りになる。
- 各論において、次第に事業目的から乖離した事業が行われるようになり、外からは何を目指しているのかわからなくなる。そしてお客さんが離れていく。
- でも、一生懸命に、そして無償で頑張っている本人達には、わりと関係がない。一定のお客さんがついているし、自己実現はしてるし、お金をもらってないので縛られる謂れがないから。
- かくして本人達の気力・財力が途切れるか、自己実現が満たされるか、ほかにもっと楽しいことが見つかった時点で「あがり」
上記のようなプロセスには、とても罪深い側面がある。
このように立ち上がる組織の殆どは、活動を継続する中で、ある種の人々にとってインフラにまで上り詰める。
ところが、それを支えているのは「構成員達の気力」であり、情熱が冷めた瞬間に根こそぎインフラが消滅してしまうからだ。社会課題を解決したくて始まった活動が、最後には新たな社会課題を生み出して終わってしまうのがとても罪深い。
では、何が必要かと言えば、やはり持続可能性、端的に言えばキャッシュフロー。儲ける必要は無いかもしれない。でも、事業として継続するためにはお金の話は避けて通れない。持ち出しには限界があるし、お金をもらっている責任感も必須だ。
と、こんなことを考えながら、修了生のお話を聞いていた。
メサ・グランデの素敵なところ
メサ・グランデの素敵なところは、店構えや佇まい、そして美味しい料理の他に2つある。
1つは、NPOとして立ち上がりつつ、トントンの収支を当たり前に据えているところである。
地元野菜の販売には様々な苦労も伴うと思うが、収益を上げようと様々な工夫・改善を凝らしていく姿勢の中から、新たなビジネスチャンスや人との繋がりが生まれている。料理を洗練し、店構えも瀟洒に保ち、地元マーケットのニーズにも答えようとしている。そうしなければ、採算を上げることができないからだ。働いている方々には給与が発生しているので、もちろん無償であることの甘えも感じられない。おそらく、お客様の相当数が、メサ・グランデがNPO法人であることを知らずに通っていることだろう。
もう一つは、このお店では障がい者の自立支援受け入れをしているのだが、それが当初の目的ではなかったという事。地元野菜の地産地消を推進している中で、「たまたま」出会った自立支援事業の人のお手伝いとして障がい者を受け入れているうちに「あれ、うちもっとちゃんと受け入れられるんじゃない?」という風に考えるようになり、「結果的に」障がい者を受け入れられる態勢になりつつあるとのこと。
もちろん、仰っているほど簡単ではないのだろうが、間もなく巣立つ障がい児の娘を持つ親として、このような自然体の考え方はとてもありがたいと感じる。
障がい者であろうがなかろうが、何らかの形で社会の役に立てるということは尊いことであるし、同時に自分自身の人生に活力を与えるものである。「ありがとう」という言葉は、誰かのために動かないともたらされない言葉だ。
というわけで、とても有意義な午後でありました。今度は娘を連れて遊びに行きたい。
●メサ・グランデ
http://mesa-grande.blogspot.com/