コンピュータ業界の人間として職業体験学習の講師をしてみた(2012)

今年も職業体験学習の講師をしました。
その内容をレポートしてみます。

活動日

平成24年11月14日〜15日(2日間)

受け入れ生徒数

母校である柏市立高柳中学校の男子生徒10名

体験の概要

  • 地元のコミュニティ「地縁のたまご」のウェブサイト改修作業(本番業務)
  • 上記作業のためのアイデア検討、および取材/ライティング・デザイン/上梓までの全て
  • 作業結果を団体代表承認の上、本番サイトにリリース

結果

サイトの以下のポイントを修正

  • サイドウィジェットの追加
  • メニュー構造の変更(コンテンツの多階層化)
  • 新規コンテンツの製作(計6点)

修正したサイトはこちらです。

地縁のたまご 公式ウェブサイト

さて本題です。

今年は本番業務、つまり職業体験学習の生徒に、実際に本物のウェブサイトを更新して欲しいと考えていました。なにぶん、依頼されたのは「職業訓練」じゃなく、「職業体験」なので。
でもそうなると、色々と課題が発生します。例えば、こんなところ。

  • そもそも、本番のページを触らせてくれるお客さんが必要
  • 壊されないための対策が必要
  • 仮に壊されても、復旧できるための対策が必要
  • 2日間でコンテンツアップできるカリキュラムが必要

これらを全て解決するため、現時点で「中学生との交流」を求めている「地縁のたまご」という地元の地域コミュニティとコラボレーションする事にしました。彼らにしてみれば、地元の中学生がサイトを更新したという事実自体が、かけがえのない「資産」になるからです。

いわば、バーター取引です。
無償で修正結果・コンテンツ・トピックスを提供する代わりに、万が一のサイト破壊に伴うリスクを背負ってもらったのです。

なお、手前味噌ですが、実はこのサイトを構築したのが、他ならぬ僕自身でしたので、サイトの構成や修正箇所の特定、万が一破損した場合の復旧手順まで固める事は、(それほどは)大変な事ではありませんでした。

でも、問題提起と修正案の構築は、まあ大変でした。
僕自身にはアイデアがあったけど、それを単にやらせたのではつまらない。
久しぶりに模造紙なんてものを買い込み、机に拡げ、彼らとともに考えました。

検討の結果、修正方針は、「とにかく、カフェの様子を伝えて行こう」「はじめてサイトを訪れる人に、この団体を信用してもらえるようにしよう」というものになりました。

というわけで、「はじめてサイトを訪れた方に向けたコンテンツを作る」「体験談を掲載する」という2つの作業を行う事に。
具体的には以下の作業を実施しました。

  • 「はじめての方へ」というコンテンツコーナーを構築
  • そのコンテンツ内に「利用者の声」「よくある質問」を構築
  • サイドバーの特等席に、「はじめての方へ」へ誘導するバナーを設置
  • 中学生自身の体験記や、カフェ照会のブログコンテンツを製作

1日目はサイト修正案の立案に、2日目は収集した情報に基づきサイトの修正を行いました。
講師である僕は、修正方法を一人一人に説明して回ったり、出来上がったコンテンツ案をレビューしたり。もうそりゃ大変でした。気がつけば、今の今まで飯も食わず、トイレにも行かず終いです。

まあでも、結果としては、かなり良い仕上がりになったんじゃないかと思います。
確かに素人っぽいけど、素人っぽいのが、逆に良いかなと。

感想

去年にも感じた事ですが、中学生は世間で言われている程「無気力」でも「無能」でもないです。そう感じるとすれば、それはきっと中学生に「無気力、無能に振る舞っていた方が、自分にとって都合がいい」と感じさせている大人の責任なんじゃないかと思います。
彼らにキチンとした役割を与え、それを実現するための手法を教えてあげる。それさえすれば、近い未来、彼らは僕達の頼もしい相棒になってくれるはずです。だから僕達大人が、たとえば職業体験を受け入れ、持てるスキルやスピリッツを伝えて行く事は、「無償の奉仕」ではなく、たぶん「先行投資」なんだと思います。

かくいう僕も、自分の息子に、そんな風に振る舞われている父親の1人です。
これは、本当に反省しなきゃならないと思う。

“One More Thing”

全部終わった後に、ひとつだけ伝えたい事を伝えました。

「将来の夢なんて聞かれても、決して職業の名前なんて答えるなよ」

想像通り、中学生はキョトンとしました。
これ、あーあ、って思うんです。

将来の夢って聞かれて、なりたい職業を答える子供を育ててしまう社会は、やっぱり駄目な社会だと思うんです。
だって、職業って、仕事って、究極的には生きるための手段でしかない。それを夢にしちゃ駄目だと思うんです。
子供達には、「夢ってのは例えば『いつか南極に行きたい』とか、『むちゃくちゃ綺麗な女の子と結婚する』とか、そういうもんだろ?」と伝えました。
子供達は笑っていたけど、冗談として捉えないで欲しいですね。

大変でしたけど、職業体験、たぶん来年も受け入れるんじゃないかと思います。

TsunenoTakashiサイト管理者

投稿者プロフィール

1973年生まれ。千葉県松戸市在住。
株式会社プラチナマイスターCOO
金融機関においてシステムエンジニア・プランナーを経験後、障がい児の娘が小学校へ入学した2010年にフリーランスへ転向。以降、Webを中心としたディレクター/エンジニアとして従事。
業務とともに地域活動にも従事し、PTA会長等を歴任。お金は大切ですが、時にはお金よりも大切な仕事もあります。

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