アクティブ・ラーニングの実践においては、生徒に企画を書かせることが儘ある。ところが小中学生は企画なんて書いたことがないので、まずは「企画」についての作法を教える必要がある。
以下は、私が企画について教える際のテキストである。私自身、会社員の時代から長いこと「企画屋」として生きてきたので、ついつい熱くなってしまうことが多いのだが、これを読んで不足しているもの、間違っていると思うものがあればご意見をいただきたい。
企画の定義
実現すべき物事の内容を考え,その実現に向けての計画を立てること。立案すること。また、その計画や案。
(出展:Weblio辞書)
こんなことを言っても、小中学生に伝わるわけがないので、このように説明する。
企画とは、企(たくら)んで、画(えが)くことである
無論、このままではポカーンとされるだけなので、それぞれについて説明をする。
企むとは?
- 「企む」とは策を練ること。
- 悪い意味で使われることが多いが、この場合もちろん「悪巧み」ではいけない。むしろ逆。
- 自分達が作り出すモノ・コトを通じて、「社会をより良いものに変えていこう」「誰かが喜ぶものを作ろう」という考えが「企み」である。
- これは何も、この授業に限ってのことではなく、企画とはすべからくそういうものであるべき。
画くとは?
- 「画く」とは、一義的には書き表すこと。でも、それだけでは足りない。
- 「企み」とは、今まで世の中にないもの。だから、誰にでもわかるように、その良さが伝わるように伝えなくてはならない。
- 「画く」というのは、そのアイデアを効果的に伝えるための手段。
まとめ1:企画はハードル
企んで、伝われば良いのか?
たとえば、こんな企画はどうだろう?
エアコンを使いすぎると地球が温暖化します。だからエアコンを使うのはやめよう。
素晴らしい。どこに出しても恥ずかしくない考え方だ。道徳の教科書に掲載したい。
でも、この企画で誰かを動かすことができるか?恐らく誰も動かすことはできないだろう。共感したような顔をした聴講者は、家に帰ればエアコンを付けるだろう。この企画には絶望的にパワーが足りない。では、パワーとは何だろう?
企画とは”?”と”!”
- とても強い問題意識からスタートしている
その場にいる誰よりも、現状を問題視している
「これは確かにまずいな」と思わせる迫力と説得力がある - 驚きの解決方法
解決方法が聴衆の予想を遥かに超えている
「そうきたか!」と思わせる破壊的創造性 - 解決への道筋が明瞭
計画が具体的である
「これは実現できそうだな」という実感がある - より良い社会が訪れる予感がビシビシする
その企画が達成された世界に「夢」を見られる
まとめ2:企画は高跳び
これはあくまでも必要条件
もちろん、企画を「企画書」として成立させるためには、まだまだ多くの必要十分条件がある。コスト計算や行動計画が立てられなければならないし、マーケットにニーズがあるのかを調査できなければならないし、リソースをどう確保するのかということも考えられなければならない。
しかし、上記のハードルを超えられない企画は、企画とは呼べない。上記のバーを超えられない企画は、採用したいとは思わない。そうでしょう?
ちなみに、私がもう少し大人に「企画とはなんだ?」と聞かれた時は、「箱庭です」と答えている。
説明のハードルが高過ぎるので小中学生には話すことはないが、いずれ機会があれば、なぜ箱庭なのかということについても話をしてみたい。