いろいろとあって、母校の職業体験を引き受けることになりました。
今日は、その1日目ってかブリーフィング。
今回は長いです。
もうずいぶん昔に大人になった僕には信じられないんだけど、近頃の小中学生は職業体験なんつーものをやってます。母校の場合は2日間近所のお店や会社に行って実際に働くとか、そのまねごとをしたりしています。
いきなりだけど、これは結構制度的運用的に無理がある。何せ、受ける側は完全にボランティア。中学生は十分なインストールをされていないまま送り出される。受け入れる先だって本来業務があるわけで、そうそう時間を割いている余裕もない。そんなわけで、自ずと職業体験ではなく、職業訓練みたいな事をやる羽目になる。
随分前にその実態を聞いていて、「あーそりゃあ無理があるよなあ」と思っていた。
実は、うちの親父が母校の学校評議委員なんてのをやっていて、毎年、職業体験の受け入れ先を探している。以前、会社人時代に相談を受け、「コンピュータ業界なんてのは、遊びでも生徒にさせることはひとっつもないよ。だから、完全に仕事をでっち上げない限り無理」って断っていた経緯がある。
それがここ1年でフリーランスになり、親父経由で中学校にも関連のある仕事を引き受けることとなり、しかもその案件が結構ぶっといものだったりするから、行きがかり上、受けざるを得なくなった。
で、どうせ受けるなら、とことんやってやろうと考えたわけです。今時の中学生のポテンシャルってどんなもんか知りたいし、自分の仕事を見直す良い機会かもしれないし、楽しそうだし。ええ、基本的にポジティブシンキングなもんで♪
今日という日を迎える1ヶ月以上前から、すでに段取りはキチンと考えていた。
彼らに与えるミッションは「校長先生に対し、自分の中学校のホームページを楽しく役に立つものに作り替える提案を行う」というもの。その中で、仕事の流れとか、意義とか、それに楽しさや辛さも教えられるといいなーと考えた。
今回は、とてもたくさんの人に助言を求めた。その中で、特に学校に近しい人々から出てくるのは「近頃の中学生はやる気とか覇気が感じられない」という感想ばかりだった。職業体験にかかる文科省の答申などを見る限りでも、このニート的でモラトリアム的な諦観を払拭したいってのが職業体験の真意らしい。
こんな事があって、俄然やる気が出てしまったわけです。だって、今の子供達が若くして諦観を持ってしまってるのって大人のせいでしょ?お金を出したり、就職先を斡旋したりすることはできないけど、せめてワクワクさせてやることは大人の役目だろうにと思ったのです。
そんなこんなで考えた、最初のブリーフィングはこんなストーリー。これは、同じ母校の卒業生である同級生達から意見をもらって肉付けしました。
1.まず自己紹介。
1)どんな仕事をしてるか
こういう時にフリーってのは楽で、自分の仕事を話すだけで面白おかしく聞いてくれた。
2)どうしてここに来たか
ここでは、
→親父に無理矢理やらされた
→当時の恩師が今、また彼らの担任だから断れない
なんて冗談っぽいことを織り交ぜつつ(もちろん二人の悪口も言いながら)、
→君たちの先輩だから
→大人の代表として、職業を教える義務がある
という本音の部分も伝えた。
2.次に、生徒に自己紹介してもらう
1)名前
2)なりたい職業
3)どんなことをやりたいか
4)その職業で幾ら稼ぎたいか
4)のアイデアは同級生にもらったんだけど、これはとっても受けた。
500万とか1,000万とかってのが大体の見方で、平均年収を伝えたら300万って意見も出てきた。でも、中には1億ってツワモノもいたんで、「それってもちろんドルなんだろ?」と切り返した上で、「稼げるようになったら連絡をくれ」と名刺を渡しておいた。
この話は、最後の最後で「仕事ってのはお金が大事、でもお金だけじゃない」って事に繋げられればと思っている。
3.職業体験とは
1)文科省の考える職業体験
君たちが悪いみたいな書き方してるから、自分のせいじゃないみたいな書き方してるから、これは怒って良いと
2)俺のやりたい職業体験
→仕事の意味、楽しさ、辛さを知ってもらい、その上で、「仕事って、辛そうだけどやってみたいかも」って思ってもらえれば成功
→どの仕事にも共通して言えるのは「仕事ってのはお客さんに何か(モノや満足)を差し出し、その見返りに適切な対価をもらうこと」
これはプレッシャーがかかる所。何せ、本番を成功させてやらないと、この言葉は生きてこないからなあ・・・。
4.今回やる事の説明
1)ホームページ改修案の企画
2)テストサイト構築
3)クライアントへのプレゼン
生徒は2と3にビビっていた。でも、一番楽しい部分だし、俺が必ず成功させてやると約束した(というか、してしまった)。でも、「俺は一切、手は出さないよ」とも。
もちろん、これには隠し球がある。
何年か前に登場したJimdoというウェブサービスを使えば、完全コーディングレスでウェブサイトが構築できるのです。そもそも、ウェブサイト真剣に作りたいって言ってる中学生に教えられる程体系だって分かってないしねー。
5.よく考えて欲しいこと
1)そもそもホームページってなに?
2)そもそもホームページのお客さんって誰?
ここでは、僕が予め答えっぽいものを持っていたんだけど、それは言わずに生徒に質問してみた。
そしたら、彼らはここまでの話をよく理解していて、ちゃんと見事な回答をしてきた。
僕は、それだけで嬉しくなってしまった。
ちなみに、僕が用意した答えは以下のとおり。
1)ホームページとは・・・
デパートで言えば
- 広告(生徒は看板と答えた。よくわかっている)
- デパートのインフォメーションセンター(情報発信と答えた)
- お店での情報交換(商品を売る場所と答えた)
- 社員の自己実現(ブログみたいなのと答えた)
2)お客さんとは
- 地域の人
- 保護者
- 入学してくる小学生
- OBOG
これはびっくりしたんだけど、僕が隠し球で持っていた
- 先生
- 生徒
も見事に言い当てた。
だけど、僕が最後の殺し文句(これは校長先生を陥落する殺し文句なんだけど)として持っていた、「将来の自分」ってのだけは出なかった。でも、これを教え、「5年後に中学が懐かしくなった時、自分自身が書いたものがここにあったら嬉しいよな」って言った時、生徒がちょっと引き込まれたのがわかった。
6.で、宿題
1)ホームページをよーく見てくる
2)なにを入れれば良いか5つ考えてくる
まず、自分が「これがあったら見にくるなー」って案を考えて。自分ってのは、「過去・現在・未来」の自分。それを想像してみて。
次に、ステークホルダの皆さん、保護者とか、自分の兄弟とか、先生とか、近所の人たちにも聞いてきて。
そんな風に伝えておいた。それと、ここで大切なコンセプトを発表した。
それは、「中学校にとっての商品は中学生。お前らが書いた文書なら、俺は毎日でも読む。だから、校長先生には『中学生自身がサイトを更新する』って提案をしようぜ」ってこと。
本番初日にブレストをやるつもりで、大判のポストイットを用意してきた。
5枚で良いからなーって伝えたら、生徒が「もっと持って行ってもいいですか」なんて聞いてきやがった。うれしくなって結局、ポストイットは全部あげてしまった。
感想。
なーんだ、やっぱり大人が悪いんじゃん、ってのが率直な感想。彼らは頭が柔軟だし、ミッションを与えれば自分で考えようとする。辛そうなミッションだって、そこに楽しみを見出だしている。こういう体験をたくさんさせてやんなきゃ駄目だと思った。
これはもちろん嬉しい誤算。
だって、くる前は「響くか、伝わるかは別に、僕がやらなきゃいけないと思うことをやろう」と、自分に言い訳してたもんな。
まさか、「一生懸命考えるのは嬉しいが、くれぐれも期末試験の勉強はおろそかにするなよ」なんてアドバイスすることになるとはね。
さて、本番は祝日明けの24日/25日。
このくそ長い文書を最後まで読んでくれた皆さんには、特別に続編をお伝えします。
で、そんな皆さんに質問。
かつてOB/OGだった皆さんにとって、中学校のホームページに「これがあったら見に行くよ」ってコンテンツがあったら教えてくださいまし。
ではノシ
ちなみに、こんなの。
http://www.youtube.com/watch?v=zaxLidEYGkU