職業体験2日目。本日はサイトを完成させ、校長先生にプレゼンします。
あ、長いよ。
忘れないうちに、完成したホームページを紹介しておきます。
http://tsuneno-test.jimdo.com/
URLがちょっとアレですが。
昨日のうちから、ホームページを見るたびに仕様、デザイン、文面が変更されていました。どうやら生徒達は家に持ち帰り「残業」している模様。どんだけやる気あんだかww
朝一番で「ホームページの作成は11時30分まで」と宣言し、そこからは13時のプレゼンに向けた準備をするように指示。
約束していた通り、グラフィックデザインの娘たちとロゴを制作。ロゴ制作自体はソフトがあるので簡単だったんですが、画像処理は敷居が高いので、逐一説明しながら作業を見せました。
また、校歌を載せたかったのですが、どうも良い素材がなく、仕方なく「練習用のインスト」をバックにした動画を作成しました。これも、外注の扱いで僕が実施。
なんてことをやっているうちに、仕事がちぐはぐしはじめました。
やっぱりデザインの人々はデザインをしたい。アイデアがあったらすぐ修正してしまう。そうすると、ライティングしている人たちが困る。その調整にディレクターが走り、結果プレゼンの作業が滞る。ここはPMの出番ですね。
ぎりぎりまで放置しておいたんですが、11時に思い腰を上げ、作業を取り纏めていきます。
まず、ディレクターのまとめていたPowerPointを一緒にブラッシュアップ。ストーリーの流れを組み直し、文面を分かりやすく直す。とは言え、彼らはかなり高い精度でストーリーの流れを作っていたので、単語を分かりやすいものに置換したり、「・・・と思う」とか「・・・かもしれない」とかいった表現を徹底的に削除しただけ。
「『プレゼンは言い切れ』ってのが鉄則だよ。曖昧な主張には、誰も耳を貸さないからね」と教えると、その後せっせと言い切りの文言に修正していたみたいです。
その論旨が出来た段階で、全員に声を掛け、「プレゼンはみんなでやるからな〜、覚悟しろよ〜」と通達。「えっ、プレゼンはディレクターの仕事じゃね?」という子たちに、「自分が作ったものに込めた思いを語る役割、他の誰かにやらせたら損だろ?」と言うと、ぶつくさ言いながら、自分の作ったコーナーを見返しながら文面を考えていました。結構真面目だよなあ。
12時から昼食にしました。本来1時間の休憩を入れていたんですが、「プレゼンのリハーサルしたい」と言われ、急遽30分に短縮。12時30分からリハーサルを開始しました。
まあ、プレゼンの体裁を整えるのは大変ですよね。ここはマネージャーが執り仕切りました。
13時、社長たる校長先生が到着。2年生の担任二人を交えプレゼンがはじまりました。
途中、幾つかつまづく所もあったのですが、最終的にはプレゼンは無事完了。校長先生からは以下のようなコメントをいただきました。
・私は実際、高中のホームページを少しずつカイゼンして来た。色々と制約がある中でのカイゼンは難しいが、その成果として、少しずつホームページのアクセス数が増えてきている。
・君たちが指摘している現状のホームページの問題「お客様の役に立っていない」「更新が遅い」「華がない」と言うのは指摘の通りで、今回、中学生らしい提案を受け、幾つもアイデアをもらった。
・ホームページのお客さんが「地域の人」「OB/OG」「新入生」「生徒・先生自身」と言うのは私も同意見だが、特に「未来の自分達」という発想が新しいと思う。このお客様があることにより、君たち自身がコンテンツを作る必要性が良く理解できた。
・制約はあるが、一つでも取り入れたいと思う。ついては、ホームページ更新の担当者に、後日再度プレゼンをして欲しい。
次回、担当者打ち合わせの機会を貰ったんですから、プレゼンとしては大成功ですね。
僕も、校長先生に「彼らに仕事を任せるのは不安な面もありましたが、最終的に彼らは僕の予想を150%裏切りました。もちろん良い方向に」と付け加えました。
その後、教室を借り、打ち上げをしました。
プレゼンというはじめての機会に、さすがに疲れたみたいなので(いや、俺も疲れたけど)、甘いものとジュースを奢りました。食べながら、僕からの最後のプレゼン。
・コンピュータ業界の仕事の流れについて
→要件定義から運用確認まで。よく見るV字型のワークフローを説明して、彼らのやった仕事の位置づけを確認
→その上で、「仕事の流れは大抵どこでも一緒だけど、コンピュータ業界はしっかりやってます」と説明
・なぜしっかりやるのか?
→コンピュータのシステムってのは、現場合わせはできず、いい感じでと指示を与えてもコンピュータは動かないから。お客さんに渡る前に完成している必要があるから。
・使えるコンピュータ業界人って?
→コンピュータに詳しい
→プログラムが組める
→システム設計ができる
→コツコツ仕事できるこんなの当たり前で・・・
→人間がどう考え、行動するか知っている
→仕事の流れを理解し、システムに組み込める
→要望を聞いて、何に困っているか分かる
→お客さんの要望にちょい足しの提案が出来る・・・ってのが大事
・アドバイス
→人間を知っておこう(他人も、自分も)
→経験しておこう(成功も、失敗も)
→仕事の原点は「誰かの役にたつこと」
→究極の目標も「誰かの役にたつこと」
・僕にとって仕事とは
→仕事って、あくまでも生きるための手段
→楽で楽しい仕事はないと思う
→でも、仕事は人生の大部分を持って行く。だから、どうせなら楽しく仕事をしよう。
ここで、こんなグラフを見せ、「何のグラフかわかる?」と質問。ヒントは、両方とも主語が「仕事は」で始まる動詞。
正解は「楽しさ」と「辛さ」。緑が「辛さ」で青が「楽しさ」です。
生徒は、少し考えながら正解にたどり着きました。
面白い仕事は辛い。でも、楽過ぎる仕事も、死ぬ程辛い仕事も面白くない。面白いのはほんの一瞬。だから、かなり辛くても、面白い仕事を見つけようね。だけど、死ぬ程辛い仕事を面白いって思うのは危険だよ、死ぬからね。
変な表現かもしれないけど、これは僕が最も伝えたかったことの一つです。
面白い仕事ってのは辛い。だけど人生を楽しむために、辛いところにチャレンジしよう。でも、一つだけルールがある。それは死なない事。死んだらおしまいだから、決して仕事で死んでは駄目だ。
さて、最後の最後。さっきのグラフについて、僕はこんな説明を加えました。
このグラフには、お金の話が一切出てこない。「辛い」「楽しい」の他に「儲かる」という観点が必要だよね。でも、ここにそれが出てこないのはなぜか。
それは、お金ってのは「満足」を測るための一つの物差しに過ぎないから。
仕事にとって重要なのが「儲かる」という観点だけだとしたら、僕はこの場所にいるわけがないよね。だって、一銭の儲けにもならないのだから。
じゃあ、僕がなんでここにいるんだろう?君たちに最初、「幾ら稼ぎたい?」って聞いたでしょ?
あれ、ただの興味本位じゃなくてね。
お金は大事。死ぬ程大事。だけど、お金だけで測れない満足が仕事にはある。それは、僕がさっき言った「仕事の究極の目的は、人の役に立つ」ってことに、深く関係している。
僕はこの話を聞いた何人もの人に「一銭の儲けにもならないこと、よくやるよねえ」と言われた。でも、君たちが「満足」を与えてくれることに賭けた。それは、君たちの「先生の予想を越えられて嬉しい」と言う一言が聞けたことで達成された。君たちが将来何になっても良いと思うけど、お金だけで測れない満足を含めて、よーく考えて仕事を選んで欲しいです。
さて、ここでジョブズの有名なスピーチを見せました。例の、「点と点」です。
僕は、彼らに辛くて楽しい仕事をさせたつもり。
彼らのうちの何人かは、もしかするとITに関係する仕事をするかもしれない。でも、そうじゃない人もいるだろう。僕が2日間で教えた事が、いつか遠い未来に彼らの未来と今を結ぶ点になればいいなあと思うし、その点になりうるだけの事は仕掛けておいたつもりです。
さて。
今僕がやっている仕事。地元のコミュニティを活性化させるためのプロジェクトで、ホームページを構築することになっています。この運営を、地元の中学生に任せたいと思っています(運営にはお金が出ないって言うしね)。
この話を中学生に紹介し、「お前ら、やってみるか?」と聞いたら、「え?やらせてくれるの?絶対やる!」という生徒が何名かいました。とりあえず、もう一つの目的が達成できそうです。
最後に、僕の所感とか。
「今時の中学生は無気力だ」なんてレッテルを貼るのは失礼だと。これは強く感じました。
彼らは決して無気力なんかじゃない。そうしたい大人たちのために無気力を演じているんじゃないかなあと思います。無気力な方が都合の良い大人の思惑があるんじゃないですかね?
彼らにたくさんの経験を積ませてやる事は、やっぱり大人の義務だと思います。
中学校の恩師からは、「お前、先生になれよ」って言われました。これは褒め言葉として受け取りましたが、「絶対にいや」と答えておきました。僕みたいな人間が先生になったら大変ですからね。僕みたいな人間は、こうやってたまに中学生と向き合い、「変な事を考える大人もいるんだよな」という程度の経験をさせれば十分です。